こんにちはこばとーんです。
お待たせしました。心理学シリーズです。
今回はリオセスリの伝説任務にて発生した不思議な現象を心理解説します。
詳しくは後ほど説明しますが、ネタバレ防止な言い方をすると『なんでリオセスリに言わないんだよ〜!』ってやつです。
プレイした人ならわかるはず(笑)
現実世界でもブラック企業などでよく起こっている現象なので、ぜひ参考にして身を守ってくださいね!
ではいってみましょう!
今回お届けする内容はこちら
今回の話にはリオセスリの伝説任務『獄守犬の章第一章・怨嗟の地にて新生を』のネタバレを含みます。
割と核心の部分に触れますので、まだプレイしてない人はご注意くださいね。
まずはあらすじをざっくり思い出しておきましょう。
出所してしばらく経ったパイモンと旅人は久々にメロピデ要塞を訪れます。
そこで帽子を無くした男と出会い、問題を解決しますが、相手はなぜか挙動不審。
そうこうしているとリオセスリとばったり出会い、一緒に監獄内をぶらぶらすることになります。
ところが、リオセスリはただぶらぶらしていただけではなく、たまたま訪れた旅人たちを利用してある問題を解決しようとしているのでした。
『制帽の会』。メロピデ要塞内に結成された公助のための組織で、新しく監獄に入ってきたメンバーのサポートなどを行っています。
監獄全体の管理を仕事にしているリオセスリとしても助けられている組織です。
しかし、どうもこの制帽の会が怪しいとリオセスリは疑っています。
制帽の会のメンバー達は妙に明るく振る舞い、やたらと品行方正です。しかし、それにそぐわずものすごく挙動不審で、そして皆一様に何かを恐れているような雰囲気を醸しています。
その原因をリオセスリは探っているのです。
そして、旅人とパイモンに協力を依頼し、制帽の会メンバーに“餌”を撒くことに成功したため、しばらく執務室で動きを待つことにしたところ、ドアがノックされます。
はい、どうでしょう?
『なんでリオセスリに言わないんだよ!』ってなるシーンですよね!
なお、このあと、リオセスリと旅人の活躍によって制帽の会問題は解決します。その過程で『この場で彼女はヒントをしっかり残していたのでいう必要がなかった』とはなっていますが、直接暴露してしまった方が手っ取り早かったはずです。
なぜエイビスはリオセスリに頼らなかったのでしょうか?
探っていきます。
人は、きっちり合理的に価値計算をして有利な方を選択しているわけではありません。時に不合理に見える動きを見せます。
試しに、次の文章を聞いて、どちらが効果的か考えてみてください。
1.12月15日までに応募すると10万円が当たる抽選に参加できます
2.12月15日までに応募しないと10万円が手に入る可能性を失います
どっちでしょう?
言ってること自体は全く同じです。
12月15日が締切で、10万円が景品の抽選がある。という事実を説明しているに過ぎません。
ところが、多くの場合、失うことを表現した方にヒトは心を動かされてしまいます。
このように『得ることよりも損失を大きく見積もってしまう性質』を損失回避と呼び、また、それに関する理論をプロスペクト理論と言います。
1979年に行動経済学者のダニエルカーネマンによって提唱された理論で、ある選択をすることで得られるものと失うものがある場合、それが選択者にとって同じくらいの価値でもなぜか失う方をより大きく見積もってしまうのです。
この現象がまさにメロピデ要塞で起きていました。
第三者の目から見た場合、エイビスはリオセスリへ報告をして危険を取り去った方が得です。
しかし、あくまでそれは『リオセスリがうまく対応してくれるだろう』という可能性でしかありません。
つまり不確定なんです。
僕たちプレイヤーからすると、『リオセスリなら絶対解決してくれるし旅人もいるんだから、こんなモブ悪役なんてどうにでもなるぜ』って気分なんですが、それはあくまで神の視点なんですよね。
エイビスからしたら不確定な賭けに過ぎません。
それよりもエイビスは目の前にある確実な痛みを取り除くことに注力します。
エイビスからすれば、ドゥジェーから行われる拷問のほうが確実に発生する痛みです。 そして、こちらは、実際に身をもって体験した出来事でもあります。
これは感覚的にも理解していただけると思いますが、 私たちは想像で起こることよりも、五感で感じる物事を優先して処理します。
例えば、食事の買い物に行ったシーンを想像してみてください。 お腹がすいた状態で買い物に行くと必要以上に買ってしまうと言う現象はよくありますよね。
自分が食べられる量は大体想像がつくので、 本来買うべき量は冷静に考えればわかるはずです。 ところが実際に空腹を感じてしまっているので、 空腹感を優先してしまって、たくさん買ってしまいます。
このように、私たちは想像で起こることがわかっていることよりも、今現在肌で感じられている感覚の方を重たく捉える性質があります。
エイビスからしてみれば、 リオセスリが助けてくれるだろう、と言う想像よりも、確実に肌感覚として知っているドゥジェーからの恐怖の方が勝ってしまうわけです。
そもそもドゥジェーが行っている訓戒はとてつもなくえげつないです。 原神においては、ファンタジー要素として「感情が集まった水を注入する」といった表現をされていましたが、 現実世界に当てはめて考えると、 脳内で分泌される恐怖に関する物質やホルモンを直接投与するようなものです。
リオセスリも言っていましたが、これは想像を絶する手法でしょう。
私たちは、脳で処理したことを感じ取って生きていますから、 その情報を直接操作されるとどうしようもありません。
例えば、お酒を飲んだりしたら、血中アルコール濃度が高まり、私たちは酔っ払った状態になります。 気合を入れたら酔っ払いにくくなるなんて事はなく、 血中アルコール濃度さえ高くなってしまえば確実に酔っ払うんです。
感情に関するホルモンも同じような働きをしていると考えると、わかりやすいでしょう。 興奮した時や安心したときに、発生するホルモンが 脳や体の様々な部分に作用することによって、私たちは総合的に興奮や安心を感覚として感じることができます。
それを直接操作してしまうと言う事は、非常に恐ろしいことです。 先程のお酒の話に例えを戻すと、 お酒は消化器官からゆるやかに吸収されるからこそ酔っ払うと言う状態になります。ですが、もし、血管に直接アルコールを入れられたら、酔っ払うなんてレベルではない危険な状態にあっという間に到達してしまうでしょう。
それは根性や気合やメンタルの問題でどうにかできるものではありません。人が感じることのできる最大量を超える恐怖が、強制的に発生するんです。考えるだけで恐ろしい方法ですね。
原神にはわりとダークな話が多いですが、今回の話は個人的にかなりゾッとする内容でした。
エイビスが感じている恐怖についてはわかりましたね。ところが、です。
1度冷静に考えてみましょう。
リオセスリに密告しに来てしまったことがばれた以上、 この後ドゥジェーのもとに戻っても罰がある事は間違いなさそうです。 であるなら、 このままリオセスリに報告してしまった方が良いのではないか?といった疑問が残ります。
確かに、冷静に考えればその通り。ところがエイビスにはそれをしない理由があるんです。
長期間にわたって、自分の力ではどうすることもできないストレス下に置かれた人間が、次第に自分で問題を解決することそのものをやめてしまう現象です。「自分にはどうすることもできない」ということを学習してしまい、無力感を抱いてしまう、ってことですね。
心理学者のマーティン・セリグマンや、アルバート・バンデューラによって様々な実験が行われた現象で、犬や魚を始め、人間にも見られる現象です。
セリグマンの実験では、 体に電流が流されるストレスを用いて実験が行われました。 自分の努力で電流を回避することができるグループと、 否応なしに電流を食ってしまうグループを比較したんですね。
すると、 自分の力で電流が回避できない後者のグループは、次第に回避しようとする努力を止め、 徐々に無気力になってしまうことがわかりました。 この状態は、うつ病の症状にかなり近いこともわかっており、 現代のうつ病研究に貢献する実験にもなっています。
現代では、パワハラがひどいブラック企業などに所属している社員などに見られる症状です。 冷静に考えれば、労基に駆け込めば問題を回避することができますが、彼らはそれをしません。
理不尽な恫喝や権力による締め付けを長期間にわたって受けた結果、 自分ではどうすることもできない無力感を学習してしまい、 次第に解決する気力を失ってしまったのです。 そして従順に従うようになります。
最近、犯罪学教室のかなえ先生がちょうど時事問題として解説していたので、リアルな社会問題と照らして学習してみたい人はこちらの動画を見てみるといいでしょう。 紹介する許可はかなえ先生からいただいております。 概要欄にリンクを貼っておくので、そちらからどうぞ。
https://www.youtube.com/live/8roCDhcdMRs?si=Kv0ClYQPv_-gZLf2&t=4339
まさしく、制帽の会でおこっていたことがこの学習性無力感です。
会の規則が明らかになるシーンをちょっと見てみましょう。
たった一度の接触ですら、パイモンに「学習」が発生しており、消極的な選択をするように変化していることがわかりますよね。
また、制帽の会メンバーは長期間に渡って恐怖に寄る統制を受けています。そのため誰も解決のために行動しなくなっており、とにかくドゥジェーから罰せられることがないように消極的な動きしかしなくなります。
ドゥジェーがいる前では指示通り演技をしますが、彼がいなくなった途端、気力をすべて失ってしまい、無気力で臆病な状態になってしまうのです。
リオセスリとともにアジトに乗り込んだ際も、もはやコミュニケーションが難しいレベルにまで塞ぎ込んでいる状態のメンバーがいました。
見てるだけでも苦しいシーンですよね。そして、リオセスリにはやっぱり心理学的な知見があるっぽい感じがします。以前解説したリネとの会話でもそうでしたが、かなり心理学や交渉術に造詣が深いキャラな雰囲気がありますね。
だいぶ胸糞な展開だったので、ここでいっちょリオセスリにバチッと決めてもらいましょう。
はい、だいぶスッキリしましたね。
制帽の会メンバーは後日、治療が行われたようです。なお、学習性無力感の治療には認知行動療法が効果的とされています。
認知行動療法とは、自分自身の考え方や捉え方を、いろいろな視点や想像、あるいは簡単な作業を通して解きほぐす治療法です。薬物治療ではなく、想像力を使ったりちょっとした書き物のようなワークをとおして視点を広げるような方法なので副作用が少ないとされています。
特にうつ病などではなくても、メンタルの健康維持に取り入れたりできるものが多いので興味がある人は「認知行動療法」などで検索してみるといいでしょう。
なお、私は医療従事者ではありません。知識オタクが勉強した内容をエンタメ的に伝えているだけです。医学的な判断はできませんのでご留意ください。もし、今回の話に心当たりがあり、深刻なようであれば医療機関での診察をオススメいたします。
いかがでしょう?リオセスリの凄さがわかると同時に、改めて原神の脚本がしっかりしているところに驚かされる内容でしたね。
今回の内容は覚えておけば、自分が学習性無力感の沼にはまる事態を避けるのに役に立ちますので、ぜひ頭の隅にでも置いておいてください。
それでは今回の知識も原神を楽しむためのヒントとして、参考まで。
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