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こんにちは。こばとーんです。
先日のアルハイゼン動画好評いただきありがとうございます。あの動画では、社会的証明を軸に解説をしました。それゆえ、逆に触れなかった内容があります。
話が脱線してしまうので、省いた内容があったんですね。でも、良い題材だったので、さらに深掘りとして紹介していきましょう。
今回の内容を覚えておけば、ネガティブな出来事への対応法などを見出す際にかなり便利ですので、ぜひ楽しみながら覚えて活用してみてください。
なのでネタバレ注意
アルハイゼン伝説任務『隼の章・烏合の虚像』のネタバレを含みます。また、魔人任務三章五幕までのネタバレを含むので要注意。
物語についての大枠の解説は、前回の動画でしておりますので、そちらを参考にどうぞ。
シラージによって構築された蜂の巣では、記憶と感情が共有されます。それによって、人々の脳を分散コンピューティングのように扱い、得意分野を処理させて、高い性能を引き出そうとしたのがハイブマインドでした。
アルハイゼンへ恨みを持っていたシラージは、イリヤースをスパイとして送り込むことにより、アルハイゼンを蜂の巣へ誘導します。しかし、それを逆手に取られて蜂の巣が瓦解してしまうのです。
シラージはハイブマインドの「記憶と感情の共有機能」を使って「アルハイゼンへの恨み」を全員に共有し、それを原動力としていました。ところがスパイとして送り込んだイリヤースが「アルハイゼンの好印象」を持ち帰ってしまったんですね。
原動力である「アルハイゼンは嫌な奴である」という情報と矛盾する内容がインプットされた結果、シラージへの不信感や不満が爆発し、蜂の巣はまとまりを失って崩れてしまった。これが前回解説した内容です。
しかし、この理屈を聞いて疑問なところは無いでしょうか?
アルハイゼンについての好印象がインプットされ、それが全体に共有されたのであれば、全員がアルハイゼンのことを好きになるという効果が発生しても良いはずです。
ですが、全体に蔓延したのは、シラージへの恨みや疑念。感覚的にはなんとなくわかるのですが、理屈としては、もう一つ足りないといったところでしょう。
なぜ、アルハイゼンの好印象が広まったにもかかわらず、蜂の巣メンバーの心に生まれたのは、恨みや疑念なのでしょうか?
この特性について解説していきます。
人間にはネガティブに強烈に反応する特性があります。
様々な実験で確認されており、その強さは、実験の内容によって色々と論じられていますが、概ね6倍から20倍程度はポジティブよりネガティブの方が強く影響するという結果が出ています。
めちゃくちゃ強いですよね。
例えば、大好きなYouTuberの動画のコメント欄を見ている場面を想像してみてください。
好意的なコメントがたくさん投げられている中に、1つだけアンチコメントみたいなものがあったら、なぜかそこに注目してしまいませんか?
「こいつは何を言っているんだ」と反論してしまいたくなる気持ちを持つ人も多いでしょう。
YouTubeのアプリを閉じた後でも、なぜかそこだけ覚えていたりする。なんてケースもあるんじゃないでしょうか?
──でも、よく考えてみてください。
他のコメントはほぼ全て好意的な内容だったんですよね。悪いコメントなんて1%にも満たないんです。なので、数字の上では気にする必要もありません。
ただ、私たちの意識には、ものすごく強烈に、その1%にも満たない、ネガティブ要素が張り付いてしまうんですよね。
これは仕事や普段の生活でも言えるでしょう。あなたの成果に対して、たくさんの人が賞賛や、もしくは、差し障りのない言葉を選んで声をかけてくれたとしても、1人が文句を言ってきたら、その一言で台無しな気分になるんじゃないでしょうか。
そうなんです。数字上の比率で見れば、ほんの些細なネガティブ要素でも、私たちの印象にはものすごく強く残ってしまう特性があるんですね。このようにネガティブに強く反応する特性をネガティブバイアスといいます。
先程の例のように良い意見と悪い意見がたくさん並んでいる中で、悪い意見を優先してしまう例の他にも様々な事例があるので紹介しておきましょう。
身近なところでは、サムネイルもありますね。
「新キャラ超楽しい!」みたいなサムネイルよりも「新キャラが早くもオワコン化」とか、「インフレで終了」「調整ミスで性能ヤバすぎ」みたいな炎上系サムネやキーワードの方が、再生率が稼げます。
これはネガティブなことが書かれていると、そっちが気になってしまう私たちの特性を生かした注目の集め方と言って良いでしょう。
まぁ好きか嫌いかで言うと、私は嫌いなのでわかっててもやりませんけど(笑)
他にも未来予測等にもネガティブバイアスは影響します。
例えば「病気の感染者が100万人になりました」と、言われたら「あー、もうこの世は終わりですね」「感染症が拡大して世界終了です」みたいな気分になりませんか?
そこまではっきりと思わなかったとしても、なんだか状況が悪くなっていっているようなニュアンスは感じますよね。
でも、これも冷静に考えてみてください。
悪くなって行っているかどうかは、前後の比較をしなくては判別できません。
例えば、もともと感染者1000万人から100万人になったのであれば、だいぶ環境は改善していると言えるでしょう。逆に、10万人から100万人になっているのであれば悪くなっていると判断できますよね。
このように、本来は、前後で比較できるような数字を提示しない限り、善悪の判断はできません。ところが、なんとなく大きい数字をポンと出されるだけで、私たちは「何かが悪化して、この状態になったのだ」というニュアンスをつかんでしまうんです。
少し視点を広げた話をすると、世界中の神話にも、この特性が見て取れます。
昔は神々の存在する美しい世界だったのに、人間が登場して、世界は汚れ、悪い世界になってしまった。このような考え方は、様々な神話体系に見てとれます。
例えばギリシャ・ローマ神話では、神々がいた時代を、「金の時代」や「銀の時代」と呼び、人間が増えてくると「銅の時代」などと呼び方が悪くなっていきます。
仏教の末法思想でも、釈迦の教えが広められていた頃は素晴らしかったのに、その教えが廃れていくことによって悟りが開けなくなる、といったような「時間の経過とともに世界が悪くなっていく」考えが土台にあります。
神話や宗教の世界も人が考え出したものですが、その多くに共通する点として、「だんだん世界は悪くなっている」という考えが共通しているところは非常に面白いと思います。
そう考えてみると、「どんどん世界は良くなっている、未来最高!」みたいな話ってほとんど聞かないですよね。
現代でも、私たちは、AIが進化することによって仕事がなくなったり、シンギュラリティが発生して人類滅亡、みたいな話を信じようとしたりします。
実際にはAIの発展により、私たちの生活はめちゃくちゃ便利になっています。今見ている動画にもAIの技術が使われていますしね。このように、良い面もあるのに、悪い点ばかりが広まりやすいのは、人間の基本性質として、ネガティブバイアスが存在するからだと言えるでしょう。
フォンテーヌの予言が、みんなに信じられていた理由も「世界がどんどん悪くなっている」という情報であるが故、とも言えるわけですね。
それだけ非常に強力な性質なんです。
そして、悪く考えてしまうのがデフォルトな性質であるが故に、悪い話をされた方が私たちは納得感を持って聞いてしまいます。
悪い噂やデマを広めてしまったり、支配されないためにも、ネガティブバイアスの存在を知って、ちゃんと根拠を考えてから判断できる人間になりたいものですよね。
こういう話をすると「人は悪いところばかりに目を向けて嫌な感じ」だとか「日本人はみんなネガティブだよね」みたいな意見がよく出てきます。挙句の果てには飛躍して「だから、搾取されているんだ」みたいな話にまで発展する人もいますよね。
いやいや、ちょっと待ってください。それこそ、ネガティブバイアスの効果をもろに受けちゃってますよ。
そもそもネガティブバイアスは人間にとって非常に便利だから備わっているんです。
もともとは危機予測のための性質なんですね。私たちは何でもかんでも楽天的に考えていたら、えらい目に遭います。
例えば、車を運転するときは、飛び出しや交通事故に気をつけないといけませんよね。「悪いことが起こるかもしれない」と想像力を働かせることで、私たちは安全に生活することができるんです。
そうなんです、ネガティブバイアスは、「生存にとって必要な機能」なんですね。
でも、だからといって、安全な世界で生きているのであれば、そこまで悪く考える必要なんてないんじゃないか、とも思うでしょう。
ただ、この特性は、そうやすやすとなくせるほど弱いものではないんです。その理由を解説していきますね。
先日の社会的証明の動画にこんなコメントをいただきました。
「社会的証明は悪い側面が目立ちますが、良い効果などはあるのでしょうか?」
なるほど。確かに悪い面をピックアップしてお伝えしてしまったので、そのように捉える人も少なくないでしょう。
なので、一旦しっかりと説明しておこうと思います。
私がよく動画で言及している心理効果の多くは、人類の生存に必要だから、身に付いている能力がほとんどです。
例えば、フリーナと召使の動画で説明している「返報性」や「コミットメントと一貫性」。
前回の動画で説明した「社会的証明」。そして今回の「ネガティブバイアス」などです。
これらの機能は、私たちに多くのメリットをくれます。非常に多岐に渡ってしまうので、ここではわかりやすく一言でまとめると『考えなくて済む』ということになるでしょう。
──私たちが正しい判断をするには、非常に多くの情報が必要です。
例えば、あなたが宝石を買いに行ったところを想像してみてください。
あなたが、宝石のプロでもない限り、その場で付いている値札が、その宝石の価値に釣り合っているかどうかは、分かりませんよね?
この宝石を「正しい金額で買いたい」と思うのであれば、あなたは、宝石について勉強する必要があります。
宝石の基本的な種類を学び、流通ルートを抑え、カットや加工の技術を学習し、それらがどの職人によって行われていると質が高いものなのか、鑑定する知識と目を養わなくてはいけません。
とてもじゃありませんが、やってられませんよね。
本来であれば、私たちは正しく物事を判断するために、いろいろな情報が必要になるはずです。この宝石の鑑定と同じように、日常生活のすべての行動に対して情報を多角的に仕入れる必要があるんです。
でも、そんなこと無理じゃないですか。
なので、私たち人間は「要点を絞った判断」をします。
つまり、たくさんの情報の中から『ここだけ見ておけば概ね間違いない』といったおいしいポイントだけに絞って判断をするんです。
宝石の例で言えば、「値札」がそれに当たります。
シンプルに、「高い値段が付いているものが良いものであるだろう」と考えるわけですね。
これについては面白い実話があります。
ある、売り上げの振るわない宝石店の店主が、仕方ないので叩き売りをしてしまおうと考えました。そこで店番をする従業員にお願いをします。
『全部の宝石を2分の1の値段にしておいてくれ』と。
「そうすれば、全部売れるだろう」と考えたわけですね。店主はしばらく店を開けることにして、店番は従業員にお願いしていました。
用事を済ませて、店主が店に帰ってくると、予想通り、宝石は全て売れています。
しかし、1つだけ予想外のことがありました。
従業員は勘違いをしており、宝石の値段を2分の1ではなく、2倍に設定していたんです。
それでも、全部の宝石が売れたことに店主は驚きました。
客は、2倍の値段が付いている商品を見て、「これはきっと良いものに違いない」と考え買って行った、というわけですね。
実際の商品は変化していないのに、ミスによって値段が2倍になったことで、価値が高いと考えてしまった現象です。
このように、私たちは複雑な思考をせずに、特定の情報だけをピックアップして判断する機能を備えています。
それらの多くは、あまりに多くの情報を処理して脳がパンクするのを防ぐために、進化とともに備わってきた性質です。
そのため、多くの場合において、私たちを助けてくれる優秀な機能と言えるでしょう。
例えば、前回説明した社会的証明。「みんながやっているから、私もやろう。」といった性質です。
新しい職場や、転校先の学校では、そこでの常識やしきたりが分かりません。
大概、そういった細かいルールというのは、その地域の歴史や、そこで繰り広げられてきた様々なエピソードを通して練り上げられたものです。
もし正しく思考して、自分の行動を決めたいのであれば、その地域について、詳しく歴史を学び、そこで関わる人々について深く理解し、どんな経緯が今まであったのかを空気感を含め全て理解する必要があります。
ですが、そんな事は不可能ですよね。
そんな時に、非常に簡単な判断方法があります。それが、みんながやっていることと同じことをすること。
先に、その地域で暮らしている人々の行動は、様々なエピソードを通して変化してきた結果、最適化されているものです。そのため、私たちが下手に頭を働かせるよりも、はるかに優れた結果にたどり着いている場合が多いんですね。
なので、ひとまず真似をすればいいんです。多くの場合、それが最良の答えになるでしょう。
もちろん必ず正解というわけではありませんが、大きく外してしまうこともありません。少なくとも安牌は打てるはずです。
このように、普通の状況であれば、ほとんど正解を引くための性質が私たちには多く備わっています。それが動画でよく触れるような心理的特性なんですね。
なので、これらの機能は本来素晴らしいものなんです。
今回のネガティブバイアスも、危険を予測して安全に生きるために、悪い予想や怖いものに眼が行きやすくなる性質です。
生存のために備わっているシステムなので、とっても強力に私達に埋め込まれている本能なんですね。
こういった、人間の特性の多くは原始時代に作られています。そのため、安全な現代だと社会システムとかみ合わせが悪くなってしまう場合があるんですね。
そうなるとバグが起こってしまって、厄介な現象がおきる、って感じです。
なので、これらの性質はあくまで機能的に備わっているものです。「性格が陰湿だからネガティブになるんだ」みたいな話ではないんですね。そこは切り離して捉えられるようになるといいでしょう。
きちんと感情と論理を分離して考えられるアルハイゼンみたいな姿勢を目指したいものです。
さて、ネガティブバイアスが非常に強力な特性である事はわかっていただけましたよね。それ故、私たちは「よくも悪くも受け取れる内容」が目の前に転がってきた場合、悪く捉えてしまうことが多くあります。
今回のアルハイゼンに対する印象も似たようなものですね。
「アルハイゼンがとても良いやつだから、みんなで好きになる」のではなく、「そんな情報を隠蔽していたシラージが信用できない」といった方向に考えてしまうわけです。
そして、ネガティブな考えは、めちゃくちゃ伝染力が強力、という点も外せません。
これはとやかく説明するよりも、SNSを見たほうが早いですよね。他人の悪口やヘイト、ゴシップ、差別感情などは、爆発的な勢いでバズります。Twitterとかわかりやすいですね。
私たちはネガティブな情報に反応しやすいため、SNSのような簡単に拡散できるツールを手に入れてしまうと、たやすくネガティブな感情を撒き散らしてしまいます。
そしてそれは、連鎖反応的に発生するため、あっという間に大きなバズを生み出すことになるんです。
ハイブマインドという、脳を直接接続して感情まで共有しているような環境は、ある意味、究極のSNSといえます。それこそあっという間にネガティブな感情が拡散することになるでしょうね。
行ってみれば、シラージはものすごい過激な炎上を味わったようなものです。そう考えるとわかりやすいですね。
いかがだったでしょうか?ハイブマインドについてより詳しく知れていたら幸いです。今回説明したような心理効果に対する理解はとても大切なスタンスですので、よかったら覚えておいてくださいね。
「参考になったぜ」と思ったらコメント残して行ってくれると嬉しいです!
それでは今回の情報も、あなたの人生を楽しむための一助として、参考まで。
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