崩壊スターレイル基礎知識、精神のアダム編
こんにちはこばとーんです。
バージョン2.1のストーリーにて、黄泉とヴェルトがお互いの過去について語り合う場面がありましたよね。
崩壊3rdの話にかなり触れる部分だったので、未プレイの方は雰囲気で察するしかなかったと思います。
そこで今回は、二人の会話で出てきたものがどんな内容だったのか。そして、何がエモかったのか解説しますね。
というわけでネタバレ注意。
今回の内容には崩壊3rd第一部終盤のネタバレを含みます。なお、いつもどおり、ネタバレの内容には極力配慮して、これからプレイするときにより楽しめるような方向・範囲になるよう努めます。
あと、説明の都合上、今回はエヴァンゲリオンから設定を引用します。テレビアニメ版、漫画版、及び旧劇場版の人類補完計画に関して説明をするので、そちらもネタバレ注意です。
ご留意いただいたうえで、ご視聴をどうぞ。
今回お届けする内容はこちら
まずは、黄泉とヴェルトが会話する場面を振り返っておきましょう。
はい。とてもいいですね。とてもいい。
BGMと、二人の声と、町並みをほんの少し映すだけの演出なのに最高の雰囲気ですよね。早速解説していきましょう。
ヴェルトが口にした、ある男とは、崩壊3rdに登場したケビン・カスラナのことです。
彼に関しては本動画でも解説しますが、前回の黄泉PV解説でも違う角度から解説しているので、よかったら合わせてご覧いただくと深く理解できると思います。よかったらどうぞ。
話に登場している流れは崩壊3rd第一部のクライマックスで登場した「精神のアダム」に関する内容ですね。登場人物の背景込みで理解できるとこのシーンのエモさがわかるので、改めて解説していきましょう。
崩壊3rdの舞台は地球です。概ね私達が現実で過ごしている地球と変わりませんが、大きな違いが一つあります。それが崩壊。
人類の科学技術や文明がある程度進化してくると発生する謎の自然現象で、度々大災害を起こしては人類を苦しめています。
代表的な現象が崩壊獣というバケモノを生み出し、人類を襲うことです。また、世界中に崩壊エネルギーというものをもたらしており、人間が高濃度の崩壊エネルギーにさらされてしまうとゾンビ化してしまいます。
ゾンビになった人は崩壊獣と同様に人類を襲う様になってしまうんですね。
そして、定期的にとんでもない力を持った存在・律者を生み出します。単体でも街を消し飛ばせるくらいの力を備えた存在で、人類にとって特に危険な、対処すべき存在です。
律者は全部で12体居るとされており、それぞれに違った能力を備えています。彼らをすべて倒し、人類文明を存続させるための戦いをするお話が崩壊3rdの世界といえます。
そして、実は被害にあっているのは現代の文明だけではありません。5万年前に地球上で栄えていた文明も同様の被害を受けており、それによって人類は最終的に滅亡しているのです。
ケビン・カスラナは、そんな前文明にいた一人の少年でした。
ある高校にかよっていたケビンはイケメンだったため、めちゃくちゃモテていましたが、誰にも振り返ることはありませんでした。彼には惚れ込んだMEIという同級生がおり、一途に想い続けていたんですね。
二人はいい感じでしたが、世界の方は順調にはいきませんでした。崩壊の被害がどんどん拡大し、二人も戦いに巻き込まれてしまいます。
もともと超天才として知られていたMEIはその頭脳を買われて対崩壊組織へスカウトされました。ケビンはそんな彼女と一緒にいたくて、同じ組織への入隊を志願します。
その後いくつもの戦いに勝利しますが、崩壊の力はどんどん強くなり、いよいよ普通の手段では勝てなくなってきました。そこで考案されたのが、崩壊獣の因子を人間へ後天的に移植してパワーアップする技術・融合戦士というもの。
これはMEIによって発案されたもので、ケビンはその想いを支えるために自ら被験体として名乗りを上げるのでした。結果、彼はとてつもない戦闘力を獲得して崩壊を圧倒できるほどになります。さらに、不老の肉体を手にしたのです。
しかし代償も大きく、彼の体温は常時マイナス30℃という、常人が触れたら凍傷になってしまう温度になってしまいました。そのため、愛するMEIと触れ合うことは二度とできません。
その後は、崩壊と戦いながらも心を許せる13人の仲間と出会い、彼らと絆を深めたり、時には衝突したりしながら、最後の戦いまで生き残ることとなります。
そんな心強い仲間はいましたが、崩壊はやはり非常に手強い相手です。崩壊はどんどん人類を追い詰め、最終決戦前においては、人類は残り3万人程度しかいませんでした。
そして、最終決戦。すべての律者を倒した後に現れる「終焉の律者」との戦いにおいて、ケビンと仲間たちは敗北し、人類は滅亡します。
しかし、ただ滅亡するわけではありません。
最後の最後に、次の世代で崩壊に勝つため、4つの計画を残したのです。
4つの計画には一人ずつ担当者がつきました。四人の担当者は全員が融合戦士の手術を受けているため、ほぼ不老の存在です。
そのため、数万年単位で生きながら壮大な計画を実行することができるんですね。
ここでは、ケビンに特に関係のある2つの計画に絞って説明します。
一つは火種計画。人類をもう一度繁栄させる計画で、前文明の最後にコールドスリープで生き残った僅かな人々を祖としてもう一度文明を発展させるプランです。
必要に応じて前文明の知識や技術を一部提供することで発展を促しつつ、崩壊に勝てる文明の誕生を見守る計画となっています。つまり、現文明はこの延長線上にあるというわけですね。
そして、ケビンが担当しているのが聖痕計画。
これは愛するMEIが残したプラン。そして、最終手段でもあります。
可能であれば、聖痕計画以外の計画が成就して、終焉の律者を倒すか、もしくは何らかの方法で戦わなくていい方向に行きたいんです。
ただ、どうしても終焉の律者とぶつかってしまう状況になった場合、人類が負ける可能性は極めて高い。というのも、前文明でぶっちぎり最強だったケビンは、現文明含めても最強なんです。そのケビンが全く勝てない相手、それが終焉の律者。
なので、どうしようもなくなった場合の最終手段として聖痕計画があるんです。
聖痕計画とは、言ってみれば人類補完計画メンタル版。
エヴァンゲリオンの人類補完計画を精神面で行うような感じです。
エヴァがわからない人も多いと思うので、改めて解説しますね。エヴァも現代の地球が舞台で、近未来っぽい科学力がある世界観なんですが、そこに使徒っていう敵が攻めてくる設定です。
実は、この使徒という存在は人間とほとんど同じ遺伝子を持っていて、ルーツも一緒なんですね。ただ、大きな違いとして、使徒は単一の生命で無限に生きることができます。言ってみれば強い生物です。
それに対して、人類は無限に生きることはできませんし、肉体もメンタルも弱く不完全な生き物ですが、知恵があります。科学力はあるのですが弱い存在です。
そこで、人類を裏で操るゼーレという組織は考えました。
人類を1回全部溶かして、一つに合体させれば、お互いの弱点を補い合う、つまり補完しあえる完璧な生物に進化できるんじゃね?と。
この計画が人類補完計画です。
エヴァンゲリオンは、主人公たちが戦っている裏で、この人類補完計画が秘密裏に動いていく様子が一つの深みでもある作品なんですね。もし、まだ見たことがない場合は、ホヨバース作品を理解するための基本テキストみたいなものなので、ぜひ視聴をおすすめします。ホヨバ作品が好きならまず間違いなく刺さると思うので、超おすすめです。
さて、聖痕計画に話を戻しましょう。聖痕計画は、人類が終焉の律者に勝てないのであれば、全く別の次元の存在に人類を進化させてしまおう、という計画。
そして、その方法は、人々を眠りに落として、夢を通じて精神世界をつなげ、そのネットワークによって一つの世界を作り出して、その世界で生きる新たな生物に進化することです。
その際に、人々の精神が合体して誕生するひとかたまりの巨人が、「精神のアダム」。
崩壊3rd物語終盤で聖痕計画はいよいよ発動してしまい、精神のアダムが現れます。終焉の律者から人類を守るための聖痕計画ですが、それは同時に最悪の計画でもあります。
夢に落ちた人々は全員が精神世界に転生する、といったわけではありません。ヴェルトの言葉を借りるなら「前に進めない人々」は夢を見ながら世界の構成素材となってしまい、ある意味では死んでいるのと変わらない状態になってしまいます。
イメージとしては、人間の心を溶かして一旦ひとかたまりにしたあと、その粘土で世界を練り上げるような感じです。そのため、町や樹木や空気などの世界を構成する材料になる成分がある程度必要になるわけです。
そのようにかなり大きな代償を伴う計画でもあるんですね。
ただ、ほっといてしまうと終焉の律者によって人類は全滅してしまうので、「全滅よりはマシな人類の存続手段」といった計画なのです。
ケビンは唯一終焉の律者と戦った経験を持つものとして、相手の強さを誰よりも知っています。そして前文明の想いを背負うものとして、必ず人類を存続させる強固な意思を持っているんです。
ケビンよりも弱い現文明の戦士たちでは明らかに終焉の律者には敵いません。だから、聖痕計画を発動することにせざるをえませんでした。
ある意味、すべての人間を殺してしまうような手段を取る聖痕計画に、現文明の戦士たちは反対します。
そしてケビンを乗り越える戦いに挑むのです。
最後は…黄泉の言うようにケビンは「失敗」してしまいます。
しかしそれは、単に「失敗」なんて言葉で表現できるものではありませんでした。前文明から紡がれた思いが、現文明の意思が、そして、ケビンの想いすら継いでくれる結末があったんです。
詳しくは、是非本編をプレイしてみてください。本当に、本当に、すばらしい結末が見られます。
実は、このとき現文明側でリーダーシップを取っていたのがヴェルト。そして、先頭で戦っていたのが雷電芽衣だったんですね。
つまり、言ってみればヴェルトとケビンは敵だったんです。でも、そんなヴェルトがケビンについて「彼はイカロスだ」と評価していることがとってもエモいんです。
崩壊3rd本編ではヴェルトがケビンについて語ることはなかったので、今回スターレイルでついに想いが判明して、ファンとしても胸が熱くなるシーンだったんですよ。
さて、「イカロスがわからん」って意見もちょっともらっていたので、ここで解説しておきましょう。
イカロスはギリシャ神話の登場人物。
お父さんはギリシャ神話の中でも「何でも作れるおじさん」で有名な名工ダイダロス。斧みたいな日用品から、魔法のような効果のある道具、そして大迷宮まで何でも作れちゃう人です。
その大迷宮は王様に命じられてつくったんですけど、アリアドネーっていうヒロインに攻略法をこっそり教えたら王様が怒っちゃって、息子のイカロス共々塔に幽閉されてしまいます。
しかし、何でも作れちゃう人なので、蜜蝋で翼を作り、塔から空を飛んで脱出したんですね。
すごい人が作ったとはいえ、材質が材質なので、太陽に近づくと熱で溶けてしまいます。なので、息子のイカロスには「あまり高く飛ぶなよ」と言っていたんですね。しかしイカロスは飛べることに感動して太陽の近くまで飛び、翼が溶けたことで海に墜落して溺死してしまう。というお話です。
これはよくある「寓話」ってやつですね。
お話を通して何らかの教訓があるような物語のことです。日本だとウサギとカメとか、アリとキリギリスみたいな感じ。
イカロスの話では、一般的に「調子に乗ったらいけないよ」みたいなニュアンスで解釈がされます。能力があるからと言ってあまりに傲慢になると、神の怒りを買って天罰がありますよ。みたいな解釈をするわけですね。
とはいえ、寓話はいろいろな解釈ができるものです。
最近では、誰も挑戦したことがない領域にチャレンジする素晴らしさや、墜落を恐れないチャレンジ精神を表すエピソードとして引用されることがありますね。そして、もう少し引いた視点では、そういった先人の挑戦と失敗があるからこそ、後進の参考となり、発展があるのだ、という考えもあります。
ヴェルトが引用したのはまさにこのパターンですね。
ケビンは崩壊3rd終盤にて、聖痕計画もろとも「失敗」してしまいます。
彼個人の範囲で見れば、それは敗北であり、何も成せなかったわけです。しかし、人類全体の視点で見ればそれは必要な失敗であり、現文明や後輩たちの進む道を切り開いた行動だったわけですね。
実際、彼は他に誰も到達したことのない領域に到達しました。そして、彼に挑戦することで現文明の戦士たちはより高く遠く進むことができたんです。間違いなく、ケビンが居なければ別の結末に至っていたでしょう。
それを現文明側として乗り越える側に居たヴェルトが、ケビンをイカロスになぞらえて語る、ってのは感慨深いものがあるんですね。
ケビンの影響力の大きさと、ヨウおじちゃんの視野の広さを両方感じられる素晴らしいパートでした。
ピノコニーで何度も繰り返し出てきている質問がありますよね。それが「人はなぜ眠るのか」。
抽象度が高すぎる質問なので、絶対的な答えがあるわけではありません。しかし、それ故にキャラそれぞれが考える答えが、それぞれの哲学や在り方を示していて面白い質問となっています。
ちなみに、現実世界でも人がなぜ眠るのかという疑問に最終的な答えは出ていません。
もちろん、疲労回復や記憶の整理などの役割があることは間違いないのですが、そもそも睡眠にその機能をもたせた理由などは明らかになっていないんですね。一説によると、実は動物は寝てる状態がデフォで、起きている状態が異常なのだ、みたいな考えも出てきているところで、非常に面白い分野でもあります。
さて、同様の役割を持つ質問が崩壊3rdでも度々登場しました。それが、「なぜ鳥は飛ぶのか」です。
この質問に色々なキャラが答えるからこそ、スタンスの違いや、人生観の片鱗が見えて、味わい深い問答になっているんですね。
たとえば、ナターシャというキャラがいます。彼女は暗殺業を営む傍ら、そこで稼いだ資金をつかって孤児院を経営しています。そんな彼女はケビンから鳥が飛ぶ理由を尋ねられてこう答えています。
冷静に仕事ができる彼女の合理性と、子どもたちを愛しているナターシャの考え方が端的に両方現れていてとてもいいですね。
そして、同様にケビンも答えています。ケビンは五万年の時を超える中で、ギリシャ・ローマ時代の哲学者達ともふれあいました。彼はその時代を生きた賢者と三度に渡って言葉を交わし、その問いの答えを探します。
本編中では間を空けて描かれるのですが、ここでは連続してまとめて見てみましょう。
まず、最初の出会い。
この時点では、ケビンは彼の勇気こそ称えはしていますが、考えについては低く見ています。それも仕方のないことで、ケビンは成熟仕切った文明で生まれ、さらにそこから5万年近く生きているわけですから、数十年生きた程度の哲学はありきたりで浅はかなものに見えているわけです。
しかし、彼の心にはほんの少しひっかかる物があったようですね。
そして、二度目の邂逅。
このときも、まだケビンは賢者を批判的な目線でみています。実際、彼は本物のヒーローをたくさんみてきたのですから、説教されるまでもありません。しかし、哲学者はケビンの考えるヒーローとは違う定義を持ち出してきました。またしても、ケビンの中に少し引っかかる部分ができたようですね。そして、再び時は流れ、三度目の演説に繋がります。
今回、ケビンは自分自身のことを訪ねています。ケビンはMEIの判断を信じて生きてきました。MEIは自分自身の考えがしっかりあるタイプでしたが、ケビンにはそこまで強固な自分はなく、「MEIの考えているとおりにしてあげたい」と考えるタイプだったんです。
しかしそれと同時に、ケビンはこの時代のことは、この時代の人間の考えで解決すべきとも考えています。なので、哲学者の意見に耳を傾けるわけですね。
最後はパートが分かれますが、続けていきましょう。
彼らはかつて見たのだ。最初の鳥が月の如き高貴な心を以て、空の天辺に触れようとし、最後には地に落ちるところを。
それを目にしたからこそ、鳥は同じことを試そうとする。そして、より高い場所へと羽ばたけるのだー
だから、今もこうして鳥は空を旋回できている。
自分はどんな鳥なのだろうか?男は知らない。しかし、何故か地面に転がっていたバスケットボールを思い出す。
イカロスは失敗していない。彼の墜落は飛ぶことに対しての成果で、ある意味では勝利の終点に辿り着けたと言える。
それはある種の狭い考え方であり、ロマンチストの独り善がりな発想かもしれないが……
世界を回す唯一の規則なのかもしれない。
はい、というわけで、これが重要な「鳥はなぜ飛ぶと思う?」の話です。ケビンは長い時の中で徐々に自身の在り方を変化させていき、最終的に乗り越えられることまで考えたうえで聖痕計画に挑んでいることがわかりますね。
問いに対する答えが「飛ばなくてはいけないから」というのも、彼の性格や考え、そして立場を反映していて素晴らしい表現ですよね。
そして、この会話を知らないヴェルトが最終的にイカロスの評価をした点がまたニクい演出となっているんですね。いや、脚本ほんとすごい。
最後に、ヴェルトと黄泉が語り合っているところのBGMについても触れておきましょう。
この曲名はfor kevin。その名の通りケビンのための曲です。崩壊3rdのサントラ収録の曲で、実は崩壊スターレイルの曲じゃないんですね。
あまりにピノコニーの雰囲気にハマりすぎててびっくりしました。
ケビンの物語を知ったうえで聴くとたまらなく沁みる名曲なので、崩壊3rdと合わせてオススメしたいコンテンツです。
いかがだったでしょうか。黄泉とヴェルトのシーンは、それだけでも非常に雰囲気があってよいシーンでしたが、崩壊3rdを知っているとたまらないレベルでいい場面だったんです。
そして、詳しいことはまだわかりませんが、黄泉はケビンに該当する人物を切ってしまったことになります。それが黄泉の世界ではどんな意味を持つのかは推測するしかありませんが、3rdの世界観と重ねて考えるだけでも相当苦しい内容だったことが感じ取れますよね。
さらに、最終的に黄泉はヴェルトの比喩を気に入って広げることで間接的に「なぜ鳥は飛ぶと思う?」という質問に答えています。この答えが、黄泉の過去が明らかになるたびに良いフックとなって来るんでしょうね。楽しみです。
そんなわけで、3rdのケビンに想いを馳せつつ、今回の解説を締めたいと思います。
この動画がよかったら高評価・チャンネル登録よろしくお願いします。
また、不定期に解説を挙げますので、通知マークをONにしていただくと見逃しが減らせると思います。
それでは、今回の情報も、あなたが崩壊シリーズを楽しむための一助として、参考まで。
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